「いつか」じゃ遅い?“今だけの島”の行方

2019/11/13

2019/10/26、オーストラリア内陸部にある世界遺産の巨岩「ウルル」への登山が恒久的に禁止されました。当日は朝から大勢の観光客らが山頂を目指して長い列を成し、世界的なニュースとなったことは記憶に新しい方もいるのではないでしょうか。

ウルルのように憧れのエリアが訪問禁止となるのは、旅好きにとっては悲しく、悔しいもの。「行きたかったのに…」という後悔は避けたいのが旅行好きの心理です。そこで、閉鎖を経て再び訪問可能になった場所や、今後渡航が禁止または制限される可能性があるエリアを調べてみました。いつか行きたい場所を意識すると同時に、地球の危機も気にかける視点を加えてみると、“新たな旅”に出会えるかもしれません。


◆インドネシア:コモド島

世界最大のトカゲ「コモドオオトカゲ(コモドドラゴン)」の生息地として知られ、世界自然遺産にも登録されているコモド島。2020年から1年間、観光客の立ち入りが禁止される見込みでしたが、先日禁止は撤回されたとする報道が出るなど、閉鎖を巡る状況は不安定。そもそもの立ち入り禁止理由は、コモドオオトカゲの生息数や繁殖を保護するため。観光客の増加に伴う環境の変化や、希少動物への影響を考慮した措置とされています。コモドオオトカゲの密漁も摘発されており、絶滅の可能性がある生物を守ろうとする働きがありました。現在は、渡航禁止の代替措置として会員制度を設け、同島を訪れる観光客の数を制限する見込みです。


◆タイ:ピピ・レイ島 マヤ湾

レオナルド・ディカプリオ主演の映画「ザ・ビーチ」(2000年公開)の舞台となり、その美しさからタイ屈指の秘島として知られるようにとなったピピ・レイ島マヤ湾。2018年に約1年間の閉鎖期間を設けると発表され現在はさらに2年間の延長が決定し、2021年6月まで観光客は上陸できません。理由は、自然条件の十分な回復のため。禁止措置が解除されたあとは、1日に立ち入り可能な観光客数が制限されるとのこと。マヤ湾は現在、プーケットからの日帰りツアーなどに含まれる船上観光の対象となっており、“元気を充填”する島と湾の様子をひっそりと眺めることができます。

※写真はピピ・レイ島のイメージ(2019年11月現在、マヤ湾は遊泳不可)

◆フィリピン:ボラカイ島、パラワン島

観光客の受け入れを禁止して環境回復を進めた結果、もう一度開放できるようになった島といえばボラカイ島。深刻化する水質汚染を重く受け止め一時閉鎖したものの、昨年10月に観光客の受け入れを再開しました。観光客の数を制限し、生態系を保護するための措置を設けたとされています。一方、全島閉鎖ではないものの、観光に制限を設けたのはパラワン島のビーチリゾート・エルニドとコロン。今後はアジア開発銀行とフィリピンの観光省が協力し、環境に配慮した持続可能な観光産業の発展を支援するという発表もあり、環境と観光資源の保全が課題に挙がっています。

※写真はボラカイ島のイメージ

◆イタリア:ベネチア

イタリア北東部の世界遺産の街、「水の都」ことベネチアも、いつか行けなくなる可能性を孕むエリアのひとつ。地球温暖化の影響で水位が上がり、今月も高潮によりサンマルコ大聖堂が浸水したとニュースになっています。住環境にも影響が出ており、高潮の被害は住宅に浸水被害が出る110センチ以上の高潮が1980年代に年平均2.6回起きていたのが、2017年までの10年間は年平均8.2回まで増加しているという報道も(朝日新聞)。住民にとって、高潮の被害や水位の上昇は観光資源の喪失に留まらず死活問題。世界で類を見ない“水上都市”であり、独自の景観はイタリアを代表する街並みのため、危機感を抱く旅行者も多いことと思われます。


地球にやさしい旅を!

どの例を見ても、渡航の禁止や制限に潜む理由は「環境」や「生物」が関わっていることが分かります。旅好きなら、「美しい景色を見たい」「珍しい動物に会いたい」と思う気持ちは、ごく自然なもの。でも、自然も生物も、すこやかな環境があってこそ輝くもの。同じ地球に生きるものとして、他国の環境や気候にも気を配り、エコフレンドリーな旅で“観光遺産”を守り続けていきたいものですね。


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Aki Sato:
ジャンクフード・競馬・落語・講談を愛する旅行業界出身の元ニュース編集者。温泉旅へ行く理由は「ザ・旅館飯」。熱量高く明るく元気に、現在ダイエットに取組み中。


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