“行かず嫌い”していませんか?
私事で恐縮ですが、先日、旅好きのアラサー友達とオンラインお茶会を開催しました。テーマは「安心して旅に出れるようになったら、真っ先に行きたい旅行先」。地方の名湯や海外リゾートを挙げる私に対し、友人Aが熱弁を振るったのは“熱海”。「なんか最近スゴイんでしょ?雑誌やテレビでよく見るんだよね!」
確かに、熱海はここ数年、50年間の衰退から見事復活を遂げ、宿泊客数がV字回復した“奇跡のまち”として数々のメディアに取り上げられています。その一方、“食わず嫌い”ならぬ“行かず嫌い”の私は、「気になるのは気になるけど、一度日帰りで行ったことはあるし…。ほかの旅先Wishリストを叶えるほうが優先度が高いなぁ…」なんて、尻込みしていたのも事実。
都心だけでなく、地方にまでその名を轟かせる熱海って、一体どんな温泉地なのでしょうか?今、改めてその魅力に迫ります。
■ここがスゴイぞ熱海(1)V字回復の温泉地
衰退していた熱海が“V字回復した”―。そんな話がメディアで取り上げられるようになったのは、2014年頃からのこと。宿泊客数が2011年に底を打ったのち、2015年には300万人を越えるまでの回復を見せた熱海ですが、果たして一体何が起こったのでしょうか?
1960年代半ばから70年代前半は、年間の宿泊客が500万人を越えていた熱海。1990年代にバブル経済が崩壊すると、その人気は急速に衰退してきました。大型宿泊施設の廃業や企業の保養所が撤退し、街は一気に元気を失くしてしまいます。その後も宿泊者数の低迷に歯止めがかからず、2011年には247万人という、全盛期の半分以下に落ち込みました。
そんな熱海を変えたのは、地域住民の皆さん。民間企業やNPO、行政が一丸となり、熱海の魅力を再発見し、街の“ファン”を増やしていったのだとか(この軌跡は市来広一郎氏著『熱海の奇跡』で追うことができます)。
熱海の人々と街が観光都市としての意欲を徐々に取り戻した結果、街の雰囲気は一変。熱海に住む地元の方々のホスピタリティが向上し、観光客の満足度も上がっていきます。そして、2015年度以降は300万人以上の宿泊客が訪れるまでに回復。今では“インスタ映え”するレトロな喫茶店や景色、話題の宿泊施設を求め、若者や夫婦、グループ旅行客が足を運ぶ街になりました。
■ここがスゴイぞ熱海(2)昭和レトロ×トレンドの融合
東京駅から新幹線を利用すれば約45分で到着できる好立地も手伝い、宿泊目的だけでなく日帰りでも行きやすい熱海。そのため、女性向け雑誌では一人旅にもオススメのエリアとして紹介されており、「昭和レトロ」な喫茶店やレストラン、街並みやパワースポットが多々取り上げられています。
路地裏に一歩足を踏み入れれば、まるで昭和へタイムスリップしたかのような街並みが残るのもポイント。なかには60数年も変わらず店を続けている喫茶店『ボンネット』や、親子で営む『ゆしまジャズ喫茶』など、昭和レトロを味わえる銘店が揃います。
その一方、古民家をリノベーションしたカフェ『CAFE KICHI』や仲見世通り商店街にあるカフェ併設の『パン樹 久遠』、インスタグラムで人気に火が付いた『熱海プリン』など、トレンドに敏感な旅好きの心をつかんで離さない名物ショップも登場。
さらに、温泉地・熱海らしく、日本最大級の露天立ち湯が名物の日帰り温浴施設『オーシャンスパ Fuua』が2019年にオープンしたり、太平洋を一望するオーシャンビューのインフィニティ露天温泉風呂が特徴的な『HOTEL MICURAS』が誕生したりと、温泉好きにはたまらない要素も詰まっています。
■ここがスゴイぞ熱海(3)全年齢・全方位をカバー
調べれば調べるほど、「熱海に行きたい!」という気持ちが高まってきた私。でも、次に湧いてきた不安は「若者が多くて、自分が行ったら浮いてしまうのではないか」ということ。そこで、よくよく調べてみましたところ…、そんな心配は無用でした。
- 観光名所…大正時代の文化財を見学できる「起雲閣」やドイツ人建築家のブルーノ・タウトが日本に残した建築「旧日向別邸(2022年4月再オープン予定)」のほか、日本三大古湯のひとつである横穴式源泉「走り湯」など、しっとり見学できる名所は盛りだくさん。加えて、1年を通じて行われる花火大会は説明不要の熱海名物。観光には、日本屈指のパワースポット「大楠」で知られる来宮神社も外せません。
- 温泉…多くの歴史を知る一大温泉リゾートだけあり、温泉や宿泊施設の選択肢が豊富な点もメリット。さくっと一人旅やラグジュアリーまで、年齢や目的を選ばず、どんな旅行客も迎えれる懐の広さは熱海の良さと言えるでしょう。2011年には星野リゾート『リゾナーレ熱海』が、2019年には『熱海後楽園ホテル』がオープンするなど、業界からの注目も高まっています。
- グルメ…海鮮をお造りや干物で味わうのはもちろん、熱海が日本一の生産量を誇る山の恵み「だいだい」も要チェック。10月下旬ごろから収穫が始まり、12月に最盛期となる熱海フルーツです。熱々の鉄板にのったナポリタンや昔ながらのオムライスなど、昭和の味そのままの洋食レストランもぜひ訪問してみては。
古き良き時代はそのままに、今も進化し続ける熱海。しばらく訪れていない人なら、“次の熱海”は以前とは全く異なる旅になること請け合いです。次の旅行のWishリストに、ぜひ加えてみてはいかがでしょうか?
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Aki Sato:
ジャンクフード・競馬・落語・講談を愛する旅行業界出身の元ニュース編集者。温泉旅へ行く理由は「ザ・旅館飯」。
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