サステイナブルツーリズムとは?私たち旅行者にできること
「SDGs」という言葉が徐々に浸透し始め、特にここ最近はテレビやインターネットなど至るところで耳にするようになりました。新型コロナウイルスにより世界が一変し環境やライフスタイルの見直しが必要となったことで、「SDGs」への取り組みが加速していると言われています。
では、「SDGs」達成のために観光産業で重要性が高まっている「サステイナブルツーリズム」とはどんな取り組みなのか、そして私たち旅行者には何ができるのか、一緒に学び、そして考えてみませんか。
そもそも「SDGs」とは?
Sustainable Development Goals「持続可能な開発目標」のこと。開発が地球の生態系と人間の福祉に影響を及ぼしており、「将来の世代の欲求を満たしつつ、現在の世代の欲求も満足させるような」持続可能な開発をおこなっていく必要があることから2015年に採択されました。具体的に17の目標を掲げ、それぞれを達成するための活動がおこなわれています。
観光産業が取り組むべき「サステイナブルツーリズム」
富裕層だけでなく幅広い層に旅行が拡大し大衆化した「マスツーリズム」や、観光地のキャパシティを超えて人が訪れる「オーバーツーリズム」の影響により、世界各地で環境汚染や自然破壊などの現象が起こってしまいました。このことから、地域の文化や自然環境に配慮し、観光地の本来の姿を持続的に保つことができるような取り組みや旅行のことを「サステイナブルツーリズム」と総称しています。
世界では「サステイナブル・ツーリズム国際認証」の動きも
日本ではまだ認証を受けた都市はありませんが、世界ではグローバルサステイナブルツーリズム協議会(GSTC)により国際認証発行の取り組みもおこなわれています。宿泊施設およびツアーオペレーター向けの国際基準(GSTC-HTO)と、観光地向けの国際基準(GSTC-D)の2つが定められており、いずれも以下4つの柱で構成されています。
1 効果的な持続可能計画
2 地域コミュニティーにおける社会経済的な恩恵の最大化
3 文化遺産への悪影響の最小化
4 環境負荷の最小化
私たち旅行者は何ができるのか
このまま環境汚染や自然破壊が進んでしまうと、私たちが大好きな旅行も今まで通りには楽しむことができなくなってしまいます。では、旅行者一個人として、どのように「サステイナブルツーリズム」と関わっていけばよいのでしょうか。
1.「サステイナブルツーリズム」に取り組む地域への積極的な訪問
まずは旅行先を選ぶ際に、地域として積極的に「SDGs」「サステイナブルツーリズム」に取り組む場所を選んでみましょう。
岐阜県-日本の源流に出会える旅-
【今も人々が生活を営む世界遺産の合掌造り集落・白川郷】【1300年前の伝統漁法を今も見ることができる鵜飼い】など、人工的なものではなく、先人から受け継がれてきた伝統・文化といった岐阜県の魅力を発信し、そして50年後、100年後も持続できるよう取り組みをおこなっています。白川村は持続可能な観光を推進するオランダのNPO“Green Destinations”が選ぶ「2020年サステイナブルな旅行先トップ100(2020 Sustainable Top 100 Destinations)」に選出されるなど、国際的にも高い評価を獲得しています。
群馬県みなかみ町-アウトドアスポーツの推進-
みなかみ町には、広大な森林や谷川岳をはじめとした多くの山や川など、豊かな自然に恵まれています。この美しい景観を観光にも活かすべく、「みなかみ町アウトドアスポーツ振興条例」を制定し、安心して楽しめる環境づくりを進めると同時に、自然環境の保護及び保全にも配慮したアウトドアスポーツの推進をおこなっています。
パラオ-世界的な成功事例として認められる取り組み-
世界的な成功事例としてはパラオが挙げられます。観光立国であるパラオは、観光客増加による水質汚染や環境破壊が大きな問題に。そこで、入国者のパラオ誓約書(Palau Pledge)への署名、旅行者からの環境税の徴収、有害な日焼け止めや砂や珊瑚の禁止など徹底した取り組みをおこなっています。また、人気スポット・ジェリーフィッシュレイクはクラゲの激減により一時は閉鎖していましたが、現在は許可証があれば訪れることができるようになっています。
2.「サステイナブルツーリズム」に取り組む施設への積極的な宿泊
最近は非常に多くの施設が「SDGs」へ取り組んでおり、Googleなどで[施設名 SDGs]と検索するとどのような取り組みをおこなっているのか記載しているホテルも多くなってきています。なかでも、ホテルグループとして大きく取り組みをおこなっている代表的な例をご紹介。
東急ホテルズ-地球・まち・ひとにやさしいホテル-
全国各地をはじめハワイや台湾にも施設を持つ「東急ホテルズ」は、ホテル事業を通じて「持続可能な社会」の実現に貢献すべくサステナブル方針を示しています。“地球にやさしいホテル・まちにやさしいホテル・ひとにやさしいホテル”を目指し、食品などの廃棄物削減やリサイクル、地域のお祭りや行事への参加、ユニバーサルルームやバリアフリールームの設置などの事業活動をおこなっています。
マリオット・インターナショナル-体験型プログラムの開始-
世界最大のホテルチェーン、米マリオット・インターナショナルでは、今年1月よりアジア太平洋地域の当グループ15軒のホテルにて、コロナ禍の先を見据えた新時代の観光を考案し、地域コミュニティの活性化と環境保全への取り組みをテーマにした、高付加価値で満足度の高い体験型プログラム『Good Travel with Marriott Bonvoy』を開始。日本国内では『ザ・リッツ・カールトン沖縄』が参加ホテルとなっており、珊瑚の植付け体験をおこなっています。
3.普段おこなっているエコ・節約活動を旅行先でも
最後に、私たち旅行者が最も簡単にできることは、普段の生活でおこなっているエコに繋がる活動を旅行先でもおこなうこと。レジ袋が有料となりエコバッグを活用するようになった人も多いと思います。エコバッグをそのまま旅先にも持って行ったり、または旅先ならではのエコバッグを購入し使用するのも思い出になるかもしれません。また、ホテルやお宿に連泊する際は清掃不要サインを出すなど、小さなことでも取り組めることはたくさんあるはず。
楽しい旅行は、美しい自然と環境、そして地域の文化があってこそ。これからも全国そして世界各国の旅行を楽しむために、私たちもできることから始めてみませんか?
Yui Odagiri:
元旅行会社ハワイ担当の業界通。趣味は、音楽鑑賞とディズニー。ブルーノマーズとミッキーを求めて海外に飛ぶことも。
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